HELLOCOFFEE
生産者がコーヒーの木の状態を確認している
コーヒーの栽培

コーヒーの木を健やかに育てるために

真っ赤なコーヒーチェリーが実るコーヒーの木、そのもとはコーヒー豆である小さな種子です。この種から発芽し、苗木となり、大きなコーヒーの木に育ちます。コーヒーの木は病気に弱く、私たちが多彩なコーヒーの風味を楽しむには、多様な品種を育てる生産者の努力と情熱が欠かせません。
ここでは、コーヒーの木のライフサイクルと、主な品種をご紹介します。

アラビカ種とロブスタ種

コーヒーには、主にアラビカ種とロブスタ種の2種類があります。

アラビカ種
アラビカ種の木、葉、コーヒーの実のイラスト
ロブスタ種
ロブスタ種の木、葉、コーヒーの実のイラスト

スターバックスで扱っているのは、高品質のアラビカ種のみ。高地で栽培されたアラビカ種から、洗練された風味・コク・酸味のある高品質なコーヒーが生まれます。ただし、病気・害虫・干ばつに弱い傾向があるのがアラビカ種の木の難点。そこで今は、耐性の強い新種のアラビカ種を開発する研究が進んでいます。スターバックスではコスタリカにあるハシエンダ アルサシア農園がその役割を果たしています。

ロブスタ種は、病気・害虫・干ばつへの抵抗力があり、たくさん収穫することができますが、風味はアラビカ種ほど洗練されていません。

アラビカ種の主要な品種

ロブスタ種とアラビカ種の家系図

アラビカ種のコーヒーの木は、ハチやその他の昆虫に頼ることなく、自らの花粉で受粉してコーヒーチェリーを実らせます。今日世界中で栽培されているコーヒーのほとんどは、エチオピアからイエメンに運ばれた少数の種の子孫であるため、遺伝的多様性はそれほどありません。コーヒーの木が世界中を移動することで、突然変異や近くに植えられた異品種交配により、多くの新種が生まれました。

品種によって、葉・コーヒーチェリー・木の見た目が異なるだけでなく、成長速度や収穫量も異なります。こうした多様な品種が、コーヒーの風味を多彩にしています。

アラビカ種の中にも様々な品種があり、非営利団体ワールドコーヒーリサーチ(WCR)によると、生産されている80%以上が、ティピカかブルボン関連の品種に由来すると言われています。ここで主要な品種をご紹介します。

ティピカ

収穫量が多く、高地で栽培すると優れた品種のコーヒーを生み出す。他の品種よりも害虫やさび病のようなコーヒーの病害に弱い。多くの品種の遺伝学的な親種。

ブルボン

収穫量は少なめだが、高地で栽培すると優れた品質のコーヒーを生み出す。複雑で甘みのある風味を持つ。熟したコーヒーチェリーの色から、イエローブルボン、レッドブルボン、オレンジブルボン、ピンクブルボンと呼ばれる木も栽培されている。

カトゥーラ

中央アメリカのコーヒー農園で最も一般的に見られる品種の一つ。木のサイズが小さいので、通常より木を密集させて植えることができる。

カトゥアイ

カトゥーラとムンドノーボを交配してブラジルで開発された品種。ラテンアメリカに多く、赤や黄色のコーヒーチェリーを密接した房状に実らせる。

パカマラ

大きなコーヒーチェリーが特徴の品種。大きな葉の陰でゆっくりと熟すため、風味が豊か。

エアルーム

何世代にもわたって生産者から生産者へと伝えられてきたか、野生で育ってきた歴史的な品種。世界中に広く行き渡らなかったが、エチオピアでは何千ものエアルーム種が育っている。

ゲイシャ

エアルーム種の一つ。繊細な風味ゆえに世界中のコーヒー愛飲家から人気を集めている。枝がすらりと細く、大きめなコーヒーチェリーを実らせ、他にはない華やかな風味も持つ。最初に発見されたエチオピアの「ゲシャ村」にちなんで名付けられた。

品種の違いによるコーヒージャーニー

パカマラ、カトゥアイ、ブルボン3つの品種を同じ条件下で育てた、エルサルバドル モンテカルロス エステート3種のパッケージ

テロワールや加工(精選)法の違いでコーヒーに独特の味わいが生まれることはよく知られていますが、品種によっても、酸味・コク・風味の特質といったプロファイルに違いが出ます。同じ場所で同じテロワールの影響を受けて育ったコーヒーでも、品種によって味がはっきりと異なる場合があるのです。

パカマラ、カトゥアイ、ブルボン。これら3つの品種を同じ農園・微気候・標高で育て、加工や焙煎も同じ方法でパッケージングしたのが、スターバックスが2019年に発売したコーヒー「エルサルバドル モンテカルロス エステート」です。

フローラルさや甘みのある複雑な味わいのパカマラ。シトラスのような酸味とアプリコットやピーチを思わせる風味のカトゥアイ。ミルクチョコレートのような風味と、メイヤーレモンを思わせる甘みのブルボン。このように、風味にはっきりとした違いが表れました。

コーヒーの未来のための研究開発

スターバックスは、サステナブルなコーヒー生産をサポートできるよう、生産者やアグロミスト(農学者)とのコミュニケーションを大切にしています。スターバックスのアグロノミストは、生産者と協働してコーヒーの品種を選び、収穫量や品質を向上させています。病気に耐性のあるコーヒーの木の新種を作るには、コーヒー業界全体の協力と研究が必要です。

研究が行われている場所の一つが、スターバックス所有のコーヒー農園であるハシエンダ アルサシア農園です。350以上の異なる品種が植えられ、コーヒー生産の未来を確かにするための研究開発が進められています。

農園は試験場として機能しており、特別に繁殖された品種やハイブリッド種を作り、育てる実験を行っています。この実験により、主にラテンアメリカのコーヒー生産に打撃を与えているさび病に抵抗力のある木々を育てています。

小さな種から芽が出て、コーヒーの木にチェリーが熟すまで

コーヒーの木は、その生涯を種、つまり豆の状態からスタートさせます。種は肥沃な土壌に並べられ、薄く土で覆われます。その後数週間かけて発芽し、小さな緑の茎が土の表面に到達し始めるにつれて、根を張り始めます。

Step 1土壌から芽を出す

土壌から芽を出したコーヒーの木

6週間ほどで、パーチメント(内果皮)で覆われた種を乗せて土壌から芽を出します。このときに最も健康な芽を選び、発芽床(種床)から苗床に移します。

Step 2羽を広げる「バタフライ」

蝶々の丸みのある羽を彷彿とさせる葉、バタフライと呼ばれるコーヒーの木の最初の本葉

2か月ほどでパーチメントの殻が落ち、コーヒーの木の最初の本葉が現れます。この葉が蝶々の丸みのある羽を彷彿させるため、「バタフライ」の段階と呼ばれます。次の数週間、苗はこの最初の葉を超えて成長し、先端が尖った、輝く細長い葉を生やします。

Step 3健康な苗を選ぶ

最初の枝が生え始めたコーヒーの木

4か月目に最初の枝が生え始め、苗の大きさ、構造、葉、色、枝の間隔、根の構造が観察されます。この頃には木がどれぐらい健康になるか、推測することができます。この段階で要件を満たさない苗は間引きされます。

Step 4コーヒー畑に移る準備

1年ほど経ち、苗が深緑の健康的な葉と突起した根を発達させたコーヒーの木

1 年ほど経つと、苗は深緑の健康的な葉と突起した根を発達させます。健康な若木は、苗床から定住地となるコーヒー畑に植え替えます。

Step 5コーヒーの木として成熟

3~5年で完全に成熟したコーヒーの木 3~5年で完全に成熟し、コーヒーチェリーを実らせ始めたコーヒーの木

コーヒーの木は約3~5年で完全に成熟します。以降も毎年花を咲かせ、コーヒーチェリーを実らせ始めます。次の数か月をかけて、季節が雨期から乾期へと再び変わり、コーヒーチェリーはゆっくりと色を緑から黄色、黄色からルビーのような赤へと変化させます。開花から実が熟すまでは、約9か月。健康なコーヒーの木からは、25~30年間収穫することができます。

剪定、植え替え、土壌管理。生産者のたゆまない努力

剪定

収穫を管理し続けられるように木のてっぺんを剪定する生産者

収穫後、コーヒーの木は休息しますが、次の成長期に向けて、収穫を管理し続けられるように木のてっぺんを剪定する必要があります。放っておくと、コーヒーの木は10メートルまで伸びることもあるので、収穫しやすいよう、約1.5~1.8メートルの高さに剪定します。
木のてっぺんを剪定するだけでなく、風通しをよくするために刈り込むことも大切です。木々が呼吸する空間をつくることで、木の健康を損なう菌類の繁殖を防ぎます。

植え替え

木を均一で、健康で、頑丈で、生産力の高い状態に維持させるため植え替えをする生産者

タイミング良く木を再生することで、木を均一で、健康で、頑丈で、生産力の高い状態に維持できます。毎年5%の木を植え替えることで、病害を減らして、収穫物の品質と収穫量を向上させています。

土壌管理

土壌管理を行う生産者

土壌管理も生産者の重要な役目です。土壌のpH(水素イオン濃度)の変化はコーヒーの品質に悪影響を及ぼすため、pHが高すぎたり低すぎたりしないか、徹底的なチェックと管理を実施します。

コーヒーの木が健やかに育つには、こうした生産者の徹底した管理が欠かせません。さらに、カップに注がれるコーヒーになるまでには、まだまだ長い道のりが続きます。

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